建物滅失登記について
建物滅失登記とは登記された建物が取り壊されたり、何らかの原因でその姿を失った際にする登記であり、それによって登記簿が閉鎖されます。建物表題登記同様、土地家屋調査士業務の中でも比較的頻度が高い業務であるとも言えます。今回は、この建物滅失登記について記述していきたいと思います。
法律上はどうなのか
建物が滅失した場合、1カ月以内に建物滅失登記を申請しなければなりません(不動産登記法第47条1項)。その申請を怠った者は、10万円以下の過料に処せられます(不動産登記法第164条)。
これは前回の建物表題登記と同じですね。法律上の罰則は設けられております。
添付書類について
建物滅失登記の実務上の添付書類は概ね以下のとおりです。
① 建物取り壊し証明書
該当建物を取り壊したことを証明する書類で、解体業者の実印・印鑑証明書付きのものです(解体業者の会社法人番号を記載した場合は印鑑証明書の省略が可能です)。取り壊し日は、我々土地家屋調査士が現地に赴いた際には既に更地であることが多いので、解体業者に聞き取り調査をして解体工事完了日を特定します。
② 代理権限証書
我々土地家屋調査士に代理申請を依頼される場合の委任状です。
③ その他書類(状況に応じて必要になる場合がございます)
建物所有者の登記簿上住所と現住所が異なる場合は、前住所入りの住民票などの沿革がつく変更証明書が必要になる場合があります。また、相続が発生している場合には相続人であることを示す戸籍謄本なども必要になる場合がございます。
実務では
表題登記は現況主義であり、建物が実際に解体されていないと建物滅失登記を申請することは出来ません。
実務ではどの段階で建物滅失登記が可能になるのでしょうか。
一般住宅であれば更地になってからとか、その後の新築建物の建物表題登記と併せて建物滅失登記を同時申請するケースがほとんどかと思われます。
施設やビルなど大型の建物の場合、更地になる前に滅失登記を申請できないかと相談を受けるケースがございます。そのような場合は、法務局の担当登記官と打ち合わせ・相談を経て登記申請という流れになります。業務に携わってきた私個人の感覚の話になりますが、
① 天井が概ね取り壊されており、内部から空を見ることができる
② 周壁のうちどこか一方が取り壊されている
これらは最低限満たしている必要があるように感じます。
抵当権が設定されている建物の場合
抵当権が設定された建物を取り壊す場合は注意が必要です。滅失登記については現況主義ですので、該当建物が実際に滅失していれば抵当権の有無に関わらず滅失登記は可能です。しかしながら完済していない抵当権がある状態で、抵当権者(金融機関など)の承諾を得ずに建物を取り壊してしまうとトラブルになる可能性があります。事前に抵当権を抹消するか、抵当権者の了承を得て建物の取り壊しをしましょう。
建物滅失の申出
とうの昔に建物は取り壊されているのに、建物滅失登記をしないままに時間が経過し、建物の登記簿だけが残っている場合がございます。このような場合、建物の登記簿上所有者様とは連絡がつかない場合が多く、建物滅失の申出をします。申出人は底地の土地所有者様です。
取り壊し等滅失の過程や解体業者が不明なことがほとんどであるため、建物所有者と連絡がつかない等の内容を記載した土地所有者からの上申書に加え、該当建物の調査を行い、確実に滅失しているという資料をできうる限り集めます。市町村の固定資産税課で課税されていない証明書を取得したり、古い住宅地図や航空写真を調べることもございます。
申請ではなく申出であるため、あくまで登記官の職権による登記簿閉鎖を促す扱いになります。よって法務局の担当登記官による別途の調査確認が行われるため、通常の滅失登記に比べると完了までに時間が掛かる点には留意が必要です。
未登記建物を取り壊した場合
未登記建物を取り壊した場合は登記簿がそもそもない状態ですので、滅失登記は必要ありません。しかしその場合、役所の固定資産税課には家屋を滅失した旨を申告することをお勧めいたします。
最後に
当事務所は土地家屋調査士と司法書士の合同事務所ですので、今回書いた建物滅失登記はもちろん、司法書士が担当する抵当権の抹消や相続関係の手続きもサポートさせていただけます。お気軽にご相談ください。